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対決

仰ぐのは 青い空ですが 見えるのはソコまで
歩むのは 赤い地上です 見えないのは先だけ


頭に応えた声と聲とを
好意の小川に浸して侵して
あなたに覚えた愛と恐れは
どうも二律背反っていうものらしいですよ


白も黒も 善も悪も
男も女も ただの二項だけじゃ足りやしない
ただふたつ それだけに
縛られていない 十進法の世界です
可能性が無限大なら
正攻法など!ひとつの手段でしょ?
正義は我にのみ あり


振り上げた右手は 何処に
空を切る程脆くはない筈だ
時は今



諦めて 飽きて 明らめて 深淵のソコまで
掻き回し 甲斐なく 飼い慣らす それでもいきていられる


期待に馴れ合う罪と罰とで
肩にのしかかる誰かの掌
あなた隣り合うHiとLowとが
疲労感になったの いつからでしょうね


在るも亡いも 善も悪も
明も暗も ただの二項だけじゃ下らない
ただふたつ それだけに
任されていない 色とりどりの世界です
修正液が乾いているなら
塗り潰しましょう!政治の手段でしょ?
未来は我が手に あり


戦慄いた右手は 此処に
天を領る程広くはないものだから
降り下ろす



崩れるまで地響け
# by caramel_box02 | 2010-11-08 09:45 | みっじかいの(縣)

エスカレーション

人影のないプラットホームではトンボ1匹が死んでいた。
磔にされた神さまのように見えた。
普段よりも短い電車が緩々とスピードを落としていく。焦らすようにじりじりと、停まる。開いた扉へ、飛び込む。
入って直ぐの座席に座り、鉄の手すりに寄り掛かる。冷たい。おれは大した間もなく、うとうとし始めた。
眠りたかった。


こえれど。
耳元で女が囁く。
こえれど。
おれはゆっくりと目を開いた。
まだ電車は動いている。白い光の中に白い女が立っている。
「こえれど」
女が口唇をもごもごさせて言った。
眠い。酔っているのか。絡まないでくれおれは疲れているんだ。
女は悲しげに眉を潜めると、大きく口を開いた。
どす黒い血がばたばたと白い床で弾けた。
「帰れない」
女は異様に短い舌をゆっくりと動かして、ゆっくりと言った。
「そう」
おれは帰るよ。
目を瞑る。終着駅まで時間がある。
寝ることにする。


夜風が頬を撫でる。
足元で十字のトンボが死んでいる。
もう秋か、と思った。
# by caramel_box02 | 2009-08-24 15:12 | みっじかいの(縣)

エスカレート

人の姿はない。きっと、おれ以外の全てが死に絶えてしまったのだろう。そんなことは、ない。
駅には白熱灯が冷たく灯っている。
体が重い。溜まっているものが乳酸なのか疲労なのか鬱屈なのかわからないが、おれの体には何か、異物が入り込んでいて、重いのだ。
だが、電車に乗ってしまえばこちらのものだ。家は近い。早く、眠ろう。
エスカレーターは天へ伸びる。工場を走るベルトコンベアのように見えた。でも今は何も運んでいない。ただ天に、昇る。先は見えない。
溜め息と同時に、足を踏み出した。
手すりにもたれるように、項垂れる。そうしていれば勝手に、改札口の前まで辿り着く。
もっと早く動けばいい。
いやに静かだ。本当に死に絶えたのか。ふと思って、顔を上げた。
女が、おれを見ていた。
おや、と思う。あんな人、居たかしら。彼女はおれより前を歩いていた筈だ。だがおれの中では、人類は絶滅していた。
見逃していたのだな。疲れているから。
女は、おれを見ている。
見ている。知り合いだろうか。目を凝らす。影の薄い顔だ。わからない。
気味が悪くて目を逸らした。
まだ見ている。見なくてもわかる。女は見ている。おれを。
頂上が見えてきた。早く帰るぞ。こんな女にこの幸せを害されたくはない。早く、昇れ。
早く。
早く。
女はおれを見ている。
何故だろうあいつ近付いてきている気がする。しかし女は一歩も下ってなどいない。そうか。あいつは、エスカレーターから下りていないだけだ。
つまり、おれの方が近付いているのだ。
女は頂上に着いたと思ったら、いつの間にかその数段下に居る。それでおれを見ている。繰り返している。
おれは昇っていく。
だってエスカレーターにはおれの意思など知ったことではないから。
だから女が近付いている。
当たり前だ。
目の前に。
女の顔が。
女は少し上からおれの顔を見下げると、にっと優しく笑った。
気付いたら改札口に立っていた。
早く寝よう。そればかり考えていた。
# by caramel_box02 | 2009-08-24 13:53 | みっじかいの(縣)

トラベラー

声を知って 目を醒ました私は
高く積み上げられた山を まず諦めた
転がって消えた硝子玉 只手探りに
闇を求めて漁るように知り得ぬ事実を掻き集めた
そしてまた山になった
どれが必要なものかわからなくなった
私は全てを諦めた

遊泳 ぷかぷかと
闇夜に浮かぶこの身
競ぎ合いの末に生まれた 安らかな感情
遊泳 ふらふらと
力抜き切って 流るる
もう1度私で生まれる為に
さ 清い星らに夢を見よう


お日柄もよく 真に乾き干されて
涙も流せぬ眼球を まず焼き捨てた
軽やかな声を 只手探りに
助け求めて神に祈ってみせた
それはまたポーズだった
何が大切なものかわからなくなった
私は全てを焼き捨てた

遊泳 ぷかぷかと
水面に浮かぶこの身
守り合いの末に生まれた 殺し合いの前兆
遊泳 ふらふらと
力抜き切って 沈みゆく
もう1度私で生まれる為に
さ 辿り着くまで 一眠りしよう
# by caramel_box02 | 2009-02-06 17:26 | みっじかいの(縣)

裏路

こういう場所がひとつでもないといけないのだろうか。
それは優越感からくる意見ではないのか。

世界が重い。
ビル街を少し離れたこの通りでは、「世の中」から見た弱者が集って生活している。

家を失って道端に眠っている姿もちらほら見える。どの人も死んだように眠っていた。

今にも崩壊しそうな家々を望みながら歩くと、その少女は店の前で座り込んでいた。

「こんばんは」

私が声を掛けようとする前に、少女が明るくも掠れた声で言った。

「こんばんは。君はここの人?」
「違うよ。この前まで大きい家に住んでたけど、お父さんが邪魔だからってここに捨てたの。
 ここの人はいつも食事をくれるよ」

彼女の服は、ついこの前までいい生活をしていたという発言を証明している。
ただし、今は所々薄汚れていた。

「怖くないの?淋しくないの?」
「いつか迎えに来てくれるから」

少女は屈託なく笑った。掘り返せば影が出るのは明白だった。
しかし私はそれをしなかった。しゃがみ込んで、笑い返す。

「おじさんはね、多分、君のお父上の部下だ」
「ぶか?」
「ああ。仲間といった所さ」

少女の顔が明るくなった。

「じゃあお父さん来てくれるの?」

私は眉を下げてみせる。

「いいや。おじさんはここを見に来ただけだ。広くて、整備すれば高値になりそうな
 土地だからね」

「お父さん、来ないの?」

理解出来たのはそれだけだったらしい。私は立ち上がった。

「邪魔な人は、追い出されなきゃいけないの?」

少女の質問は、不思議と的を得ている。
私は携帯電話を操作し、少女の父の電話番号を呼び出した。


「君は自分だけでも、救われたいと思うかい?」




<ぼやき>

今日更新した記事は去年使っていたノートに残っていたものの中から選んで
打ち直しましたが、よく見ると全て問いかけで終わっています。
どうなのでしょう。もう1本長いのを打ちたいです。問いかけで終わらないものを。
# by caramel_box02 | 2008-08-25 22:34 | みっじかいの(縣)